「時間ねぇ~」って書くと「地獄のミサワ」ライクなドヤ顔野郎以外の何ものでも無くなってしまうんだけど、とにかく毎日がもの凄い速さで流れて行ってしまうような気がしてならない今日この頃。「ジャネーの法則」じゃないけど、どうして大人になると時間の流れが速くなるのか、子供の頃の体感時間に戻りたい!そんな虚しい願望を唱えつつ、なんとか捻出した時間で読んだ11月の本たちの紹介であります。今回はAV・暴力団・金などのアングラ寄りの面白セレクションで読みやすい上にボリュームも少な目、「新書で冊数稼ぐ宮崎某はバカ」という恩師の言葉はとりあえず無視して、速読できてしまいそうなものを優先的に選びましたよ、えぇ!
『ナニワ金融道 ゼニの魔力』は言わずと知れたナニワ金融道の青木雄二の著作だけど、マルクスに傾倒していたというのは知らなんだという感じ。資本主義のダメ具合を嘆くけど、これだと思想転覆のための野望を鼓舞されるというより、むしろ絶対的に資本主義における中産階級以上にならなくてはいけないって思いの方が強くなります。著者もマンション経営の不労所得あったみたいだし。
『続・暴力団』、たしか前作の『暴力団』で暴力団ルポはもうやらない宣言があったように思うけれど、事態は2011~2012年で波乱の激動を見せたということで、続編が書かれることに。とりあえず前著は、だいぶ儲かったんでしょうね。「半グレ」についても前作に続いて出てきますが、やはり一番読んでいて不安というかイラッとさせられる部分は、法律である暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)がなぜか暴力団の存在を肯定していて、しかも法律の下位にあたる暴排条例(暴力団排除条例)ではその存在を否認するというダブルスタンダード状態になっていること(法律が組織犯罪集団を認めていること自体が国際的に珍しい)。しかも、暴排条例は暴力団を否認するだけならまだしも、接点を持った民間企業もネットの公的なサイトで吊し上げられてしまう実質的な罰則なんかがあって、つまるところ「住民の責務で暴力団を排除しろ」という「?」な内容になってしまっている。県警対組織暴力(映画ね)ならぬ住民対組織暴力というとんでも構造を内包しております、納税してなおかつ自分で戦わないといけない罰ゲーム!なんで、こんな歪な構造になってるの?っていうのは本書の第五章「警察は頼りになるのか?」に書かれている通り。
『65歳。職業AV男優』は、著者の山田祐二が56歳のときに第二の人生として歩み始めたAV男優の世界を紹介すると共に、その道のプロフェッショナルとしての仕事術を披露する内容。家族バレしてないのか?エキストラでおっぱい揉んでいたころは奥さんと一緒に放送された内容を見ていたみたいだけど、AV男優としての仕事は隠し通しているのかな。その辺は不明(隠しているみたいなんだけど、バレてると思うんだよなぁ)ですが、空気を読んで現場を取り持ち、女優さんの嫌がるプレイも先回りして探りを入れておく、など気配りの達人としての自己評価が高いようです。出会い系で知り合った恋人も4~5人いるそうで、一番若い子は20代。「都合のいいおじさん」であることがモテる秘訣という持論の著者ですが、巻末の監督によるインタビューでは「お金にガツガツしていないっていうのがちょっとマイナス面」との指摘も、「必死になり過ぎない仕事術」っていうのは、肩の力が抜けてそうで聞こえはいいけど、同僚からは若干の煙たさもあるようで、まあ諸刃の剣であるとかそんな印象を抱きました……、うん、この指摘って筆者の自己評価が根底から覆りかねないと思うんだ、空気って一口に言っても色々あるよねっていう。
『往復書簡』、3冊目ぐらいで湊かなえのパターンらしきものが見えてきたけど、なんというか「その条件、都合良くない?」という。面白いし巧いなと思う箇所も多いけれど、今回の作品は特にご都合主義度合が強かった。ビックリ要素とご都合主義は紙一重かもしれない。