【絵本】うちの子『もいもい』へ圧倒的な食いつきを見せる

絵本ということで、就活していたころ福音館書店を落ちたブログ主がお送りいたしますね。

読み聞かせが幼児教育に良いというのは、各所で言われているし僕もそうだろうと思いますが、個人的には4、5歳のころに『ピーターラビット』シリーズとか『エルマーの冒険』は親に繰り返し読んでもらった覚えがあるけど、それより前に何か読んでもらったという記憶は残念ながらないわけです。(そもそも3歳ぐらいより前の記憶がほとんどないのは幼児期健忘と言われていますね)
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中村文則『掏摸<スリ>』を読んで

中村文則の『教団X』を先日読んだ流れで、同作家の作品で「大江健三郎賞」受賞作でもある『掏摸<スリ>』を読んでみることに。ちなみに大江健三郎賞には綿矢りさや本谷有希子といった錚々たる面々が歴代の受賞者に名を連ねていますが、大江健三郎本人から激賞されていた記憶のある長嶋有はこの賞を貰ってなかったんじゃないかと思って調べてみたら、ちゃっかり第一回目の受賞者となっていた模様(笑)。2006年創設で2007年~2014年の計8回で終了した短命な文学賞だけど、大江氏の中では長嶋有にとらせた時点で実は賞としての目的は果たされていたのではと邪推したくなる感も……、まあ世の中には2回しか開催されてない夏目漱石賞なんてものもあったみたいですが。ちなみに本作『掏摸』は大江賞の第4回目の受賞作となります。以下、ネタバレも含みます。
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『筒井康隆入門』:多作な作家を知るためのガイドブック

日本のスラップスティック系を代表する作家と言えば筒井康隆と永井豪をあげて差し支えないと思うけど、二人とも相当な作品数があるが故に初心者にとってどこから入ればいいのか分からない問題があったりします。筒井康隆に関して言えば、そんな問題を解決するために最近になって佐々木敦による『筒井康隆入門』が上梓されまして、初期から直近の作品までを網羅的に解説を試みた意欲作となっていました。本書のテーマというかキーワードは「筒井康隆は二人いる」ということで、正直言って読了後もその主張については若干の「?」な印象はあったものの(色々な軸に関して、両極を行き来できる人間ということだと思うけど)、なにより膨大な数になる筒井康隆の小説群を時系列にそって俯瞰的に知りたい場合はうってつけの良書だと言えます。

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村上春樹『騎士団長殺し』:井戸とか穴がチート装置化してる問題

村上春樹の新作長編『騎士団長殺し』を読んだので、その雑感のようなものでも。過去作品の焼き直しとか、あまり芳しくない評価っぽいけど、たしかに「村上春樹」の作品でなかったなら読み切るのが辛かった部分もあって、ブランド力って偉大だなあと(笑)。

でも「過去作品の焼き直し、テーマの使い回し」と批判されたとしても、それでも売上があるんだからベテラン作家の特権と言えるし、むしろ大御所になっても新しい作品を創作し続ける気概は無くしていないという意味で評価されるべき部分だと思えたりもします。

大江健三郎なんかは後期の作品になると自身の出身地である四国の森の話ばかり延々と書いていたりするし自己作品の引用も多くて、一見さんお断りな作風になってしまったためか「読者がお前の全作品を読んでいると思うなよ」なんて批判されてますが。それでもある程度の売上はあるから許されるということなんでしょう。(大御所過ぎて編集者が何も言えない可能性もありそうだけど……、御年82歳『晩年様式集 イン・レイト・スタイル』が最後の作品になってしまうのか)

『騎士団長殺し』に戻ると、あらすじは妻から唐突に離婚を切り出された主人公の画家、その彼に起こった1年弱の物語という構成。部分的に2014年に出版された短編集『女のいない男たち』にあるプロットをつなげて拡張していったような作りで、この離婚やら不倫のテーマ性へのこだわりのせいで「もしかして春樹って離婚したのかな?」と思わず穿った読み方になってしまったけど、私小説ではないので作品と作家の私生活は別モノとしないといけないですね(ちなみに調べた範囲では村上春樹が離婚したことを報じた内容は見つからなかったです)

で、読んでいて辛いというか、なんかチートに感じたのはイデアの力を借りて女の子がピンチを切り抜けるシーンで、ネタバレになるから具体的に書かないけど、マジックリアリズムとかスリップストリームと言われる手法を都合よく使っているなあと。ミステリーだったら許されざる行為で(まあ、ミステリーではないんだけど)、それにしてもご都合主義的なものを感じずにはいられないモヤッとした読後感が残りました。

思うに春樹の小説に井戸とか穴が出てくると、まさしく表象的な意味で精神的に深い部分にいることを現していて、そこにおいてはどんな超常的な現象も起こりうるし、それが小説内の現実世界にまで作用しつつ許容されてしまうから、要するに「井戸・穴」の類がご都合装置化しているんじゃないかと。その辺が春樹の上手さでもあるしズルさでもあるのかなぁ、なんて気がしました。

まあ、別れた妻の妊娠した経緯は、そういったなんでもありな世界観故に面白い含みを持たせてますけどね。

それでは今日はこの辺で。

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村上春樹『女のいない男たち』:スピリチュアルな主人公

村上春樹と言えば、最近ではノーベル文学賞受賞の期待が年々高まる作家という話題が先行するばかりで、あまり作品自体の評価が聞こえてこない気がしますが(ここのところ長編出してないからかな……、でもこの記事書いている途中で知ったけど明日2/24に『騎士団長殺し』という長編が発売されると知り、かなり驚いてます笑)、『東京奇譚集』以来9年ぶりとなる短編集が文庫版になって発売されていたので読んでみることに。

春樹文学の読みやすさ

自分が学生のころは春樹作品に漂う軽薄さが苦手で、「これは純文学じゃないよな~」なんて思いながら読んでましたけど、今となってはこのライトさがむしろありがたいという(笑)。時間がなくてもサラッと読める、前後関係を忘れてもすぐに内容を把握して物語に戻ることができるっていうのは、春樹文学の強みでありますな。

スピリチュアル小説

でも、主人公が達観し過ぎてるきらいがあるのは相変わらずで、「ああ、これはスピリチュアル小説というジャンルだ」と勝手に名付けてます。で、この主人公であるすべての「僕」たちの達観した思考回路が、春樹文学の持つ特有の軽薄さのもとである気がします。

話が面白くないというわけではないけど、実質的に身になることは何も語っていないというか、まあ身になるものを求めて純文学読む人間もいないだろうけど、それにしても読了後に物語を反芻してみると一体何が要点だったのだろうかとクライマックスの不在感に戸惑うこともしばしば。

実用書じゃないから、文学は物事の真ん中を射貫いてはいけない、その真ん中は読者の想像力のために残しておかなくてはいけないなどと言われますけどね。ふわふわと何かを感じ取る、スピリチュアルな読了感が強いです。どの作品の主人公も、「僕」が達観し過ぎてて内省とか感情の発露がちょっと弱いから、スピリチュアルというか宗教めいてくるのかもしれないでえすね、「なんでも受け入れてしまう聖人のような人」という意味で。


寝取られた男たち

ということで、前置きが長くなってきたので本作『女のいない男たち』についてなんだけど、予備知識なしに読んだら最初の2編『ドライブ・マイ・カー』、『イエスタデイ』は寝取られ・疑似寝取られを題材にした物語で意外でした。『ドライブ~』の方は間男と一緒に酒を飲みに行くというスリリングな展開、でも浮気相手のことを「たいしたやつじゃない」と結論付けることしかできない主人公のモヤモヤとした決着のつけ方が、むしろリアルで良いかもしれないです。

『木野』は奥さんに不倫された男の話で、離婚後にバーを開店したり、そこに猫がやってきたりとデティールも豊富で印象的な一遍。象徴的なものとして蛇が出てきたりと、民話的で多和田葉子の作品のような雰囲気も?最後に主人公の心の動きがあるという意味でも、読み応えの感じられる作品でした。

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追記2/23 23:15
ニュースで『騎士団長殺し』の発売直前の中継を本屋から放送してますね、相変わらず凄まじい人気というか、ハルキストが盛り上がっているだけなのか。でも初版が発売される前から重版が既に決定しているとの話。

村田沙耶香『コンビニ人間』:徐々に立ち上がる主人公の病的な気質

コンビニは3大手だとセブンイレブン派です。ここ2,3年でお弁当・お惣菜系に力を入れてきている印象。ちなみに2016年のコンビニ勢力図(店舗数)で業界4位のサークルK・サンクスが業界3位のファミリーマートと経営統合、全店舗をファミリーマートに統一するということで、店舗数で現在2位のローソンを抜いて首位のセブンに次ぐことになるという話がありましたが、ついに今月1日に名古屋のサークルKが衣替え第一号店としてファミリーマートになったそう……、長い枕ですが『コンビニ人間』読みました。

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正直モテたいので、『ぼくは愛を証明しようと思う。』を読む。

一時web界隈で盛り上げりを見せていた「恋愛工学」、藤沢数希という金融工学畑の著者が恋愛にそのフレームワークを応用して開発した脱非モテのためのプログラムという聞いただけでは「?」な内容で、彼のメールマガジンを購読しない限りその実態を伺い知ることがほとんど出来ないことで知られてるけど、ここにきて小説という形でそれらのメソッドが余すことなく披露されることになったので、さっそくというかやっと読んでみることに。
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『東大卒プロゲーマー』:マーダーフェイスの人間賛歌

毎日格ゲーを8時間練習する東大卒のプロゲーマーときど、「8時間仕事をしている」と置き換えれば大したことはないとサラッと語られているが、それでも何か異質な驚きがある。ちなみに、『勝つための確率思考』の著者で東大卒ポーカー王者である木原直哉氏も毎日10時間ポーカーをやるらしい。
驚異的な練習量と分析能力で世界のゲーム大会における優勝回数が世界一を誇るときどだが、インタビューなどでよく尋ねられる質問があるという。「東大まで出て、なんでプロゲーマーになったのか」という誰もが思い浮かべる疑問。それに答えるため、むしろ彼自身が答えられるに至るまでの紆余曲折が綴られたのが本書の構成となっている。
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