トビー・フーパー『悪魔のいけにえ』:ラストシーン凄すぎ

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 有名過ぎるけれど観てなかったシリーズ。何を隠そうスプラッターが苦手なのでチェーンソーを振りかざす姿に食指が動かず、むしろ積極的に敬遠してた節もありましたが、今回鑑賞してみて低予算B級ホラーの企画サイズに似合わない何かを宿してしまった歴史的作品に仕上がってしまっていることが確認された次第です。さすがマスターフィルムがニューヨーク近代美術館に所蔵されているだけのことはあるといったところ。


 よく知られているのは、この作品がアメリカの連続殺人犯であるエド・ゲインの事件をモデルにしているということで、冒頭のモノローグでもそれらしきことが語られています。ちなみに本作のあらすじは、男女5人の若者が帰郷して、そこで人肉の仮面を被るレザーマスクとその一家によって惨殺されてしまうというもの。

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Wikipedia
エド・ゲイン(Ed Gein、本名はエドワード・セオドア・ゲイン〈Edward Theodore Gein〉、1906年8月27日 – 1984年7月26日)は、アメリカ合衆国の殺人者、墓荒らしである。彼の犯罪は、彼が地元の墓場から掘り返した死体で作り出した恐ろしい「戦利品」と「記念品」を警察当局に発見されたことで名を馳せた。彼の有罪判決は2人の人間の殺害のみであるにもかかわらず、しばしば連続殺人者と呼ばれる。


 しかしながら、これまたWikipediaで恐縮ですが、「悪魔のいけにえ」の項目を見てみると、実はトビー・フーパー監督自身はこのエド・ゲインの事件は曖昧にしか覚えてなかったらしく、撮影終了後に映画の内容と似た事件があると評論家に指摘されて仰天したらしいです。このまったく計算されてない感じがいいですね、牧歌的というかタナボタというか。

 で、恐怖感を煽る苦肉の演出として「これは真実の物語」というテロップを冒頭に付け足しておいだけだったのに、映画を観た人々がエド・ゲインの事件をテーマにして作った作品だと勘違いしてしまい、監督もそれを否定しないで傍観しているうちに、そちらの通説の方が定着してしまい結果として爆発的なヒットにつながったとのこと、脱力感満載の裏話に感動!

 でも墓荒らしで始まる冒頭とか、事件を知らずに作っていたとしたらあまりに共時性が高すぎて、そっちの方がよっぽどオカルトというかホラーです。やっぱり監督の記憶の片隅には残っていたと考えるのが妥当じゃないですかね。

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 こんな事実を知ってしまったので興醒めパターンに入るかと思いましたが、実際に鑑賞してみると映画そのものは得体の知れない殺伐とした恐怖が凄まじくて、なんか形容し難いんだけど映画全体が気持ち悪さを発しています。音楽も当然なく、響いてくるアナログな効果音もどうやって鳴らしてるのかわからない武満徹のような現代音楽的領域。予想不可な気味の悪さです。

 それに詳細には語られることのないプロットの乱暴さと飾り気のない映像も相まって、分かりやすいドラマ性を排除して淡々とした恐怖のリアリティーの獲得に成功しているといった具合。ドキュメンタリータッチと言われるのも頷けます。

 でも、何よりも素晴らしいのがラストシーン、あそこはどうしてあんなに美しく仕上がってしまったのかというぐらい出色の出来。夕日をバックに取り逃がした獲物に困惑してチェーンソーを振り回すレザーマスクを映して唐突に幕引きするシークエンス。レザーマスクの側の感情に突如として接近して、ホラー要素から一瞬だけ逸脱した描写にすることで、奥行を持たせる効果をもたらしています。このシーンと直前の逃げ切った女優の狂喜の笑いによって一気に「ホラー+芸術」への昇華を果たしていると思います。

 作品名を忘れちゃったけど、ロシア映画で最後に婆さんが発狂して裸で暴れ回る映画を観たときみたなショックがありました。あれ何てタイトルだったかな。

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The Texas Chainsaw Massacre – Original Trailer 1974


悪魔のいけにえ 特別価格版 [DVD]

悪魔のいけにえ(1974)
THE TEXAS CHAIN SAW MASSACRE
上映時間 84分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開(ヘラルド)
初公開年月 1975/02/
ジャンル ホラー

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コメント

  1. 映画好き より:

    婆さんが半狂乱になって裸で走り回るソ連の映画は「動くな、死ね、蘇れ」ですね。

    • せいじ より:

      >>映画好きさん

      コメントありがとうございます!
      「動くな、死ね、蘇れ」で検索したら、まさにこの映画でした。
      よく「婆さんが走り回る」ヒントだけで当てられましたね(笑)。
      長年の疑問が解けてスッキリしましたよ、感謝です。