自分より2,3歳年上の世代がファミコンとかビックリマン、それにこのキョンシーなんかモロに直撃した世代だと思うけれど、自分も幼稚園から小1ぐらいのときにかろうじて『幽幻道士』は見てました。主人公のテンテンが可愛いとかそういう感覚はまだ無かったけど、とにかくチビッコたちの間でもブームでキョンシーごっこして友達に首絞められた思い出とか、池袋サンシャインだったかでやっていたキョンシーが追ってくるお化け屋敷イベントみたいなところの物販ブースで購入した霊符と木剣も持ってた記憶があるし……、とにかくそれぐらい流行ってたと。
最近では川島海荷主演の『キョンシーガール』とかも放送されてたので、またキョンシー・ブーム来るの?という流れがここ数年あったものの起爆剤にはならずブーム作りも不発だったなあ……、と思い返しつつアマゾン・プライムで再鑑賞した本作となります。
そもそもキョンシーってなんなの、吸血鬼×ゾンビみたいなもの?ということで、wikipedia見てみると下記のような記述があります。
- もともと中国においては、人が死んで埋葬する前に室内に安置しておくと、夜になって突然動きだし、人を驚かすことがあると昔から言われていた。それが僵尸(殭屍)(キョンシー)である。「僵」という漢字は死体(=尸)が硬直すると言う意味で、動いても、人に知られたり、何かの拍子ですぐまた元のように体がこわばることから名付けられた。
- 中国湖南省西部よりの出稼ぎ人の遺体を道士が故郷へ搬送する手段として、呪術で歩かせたのが始まりという伝承があり、この方法を「趕屍(かんし)」と称する。
という感じで火葬しない文化圏からは、やはりゾンビ的な怪物が生まれやすいのだろうと理解したところで本作について。各所で言われている通り、キョンシーがほとんど出てこない残念な作りとなっていて、懐かしさに釣られて本作を手に取った人からするとけっこう肩透かしを食うと思うし、せっかく出てきたキョンシーすらも……ッ!という往年のキョンシー・ファンからすると噴飯ものな作りでありました。映像も綺麗だし(団地ものでもあるので個人的には嬉しい)、アクションや戦闘シーンそれにグロ過ぎない調整具合など色々なバランスが良い感じの仕上がりなのに、脚本が冗長かつ難解で肝心かなめのキョンシーは不在という大きな欠陥構造を抱えています。
「なんだこりゃ?」ということでクレジットを見てみると清水崇の名が。『呪怨』などで有名な監督だけど、今作の戦犯はこの人なんじゃないかと思っております。こちとらキョンシー期待してるのに、呪怨に出てきそうな双子の女幽霊と例のアルビノっぽい真っ白い少年といったお決まりのキャラクター、これは絶対この人によるジャパニーズ・ホラー方面の圧力があったでしょ?というか最初からキョンシー×ジャパニーズ・ホラーっていうタイアップが基本コンセプトにあったんだけど、うまくいかなかったんじゃないかと推測、だから宣伝も「キョンシー」だけを売り出す形になったのではないかと。
元気過ぎる双子幽霊がキョンシーに取り憑いたせいで膝を曲げずに跳ねるキョンシー独特のあの動きがなくなり、壁とか天井を縦横無尽に飛び回り始めるって、おまえはスパイダーマンかよ!?と突っ込みたくなるほどの見事なコンテンツ殺し。キョンシーとか全く興味ないし愛もないし、そもそも知らないんじゃないの?と書きたくなるレベル、そして書くほど怒りがこみ上げてくるんだけど、最後は物語を創作するうえで禁じ手とされる夢オチ、一体どうしたのでしょうか?夢オチにする必然もよくわからないし、そもそもあまりに唐突で意味不明な終わり方で夢オチであることもすぐには理解できず、『キョンシー 解説』でネット検索してしまった……。舞台や映像のクオリティーは高いのに夢オチ脚本とキョンシーが出てこないせいで、AVのパッケージ詐欺みたいな作品という評価になってしまったね。(本作のパケ写のキョンシーのクオリティー見たらそりゃ高まるよね)
【おまけ】
『霊幻道士』4作目の主役を演じたときのアンソニー・チェン(陳友)、なんかイケメンではないけどカッコいい。
屍
RIGOR MORTIS
リゴル・モルティス/死後硬直(第26回東京国際映画祭)
監督:ジュノ・マック
制作:清水崇
出演:チン・シュウホウ、クララ・ウェイ、パウ・ヘイチン、アンソニー・チェン
上映時間:101分
製作国:香港
ジャンル:ホラー/ファンタジー
映倫:R15+
[amazonjs asin=”B00SG6PNC0″ locale=”JP” title=”キョンシー(吹替版)”]