『鉄男』:桐島経由での鑑賞

鉄男 TETSUO 塚本晋也監督 田口トモロヲ

塚本晋也監督の出世作『鉄男』を鑑賞。モノクロームで映された昭和の街並みと危機感を煽るコマ撮り手法に乗せて、田口トモロヲの怪演が光っている……、というよりも出演者一様に怪演状態の沸騰映画。鉄男の姿を見て恐怖に慄く不二稿京の表情とか、白黒の陰影も相まって楳図かずおの恐怖絵みたいに凄いことになってます。「大抵のことには驚かないから、ねえ、見せてよ」っていうフラグの立て方が、しつこ過ぎて逆に新鮮味があったり!いったい何回言ったよ?(笑)

ストーリー
ある朝、しがないサラリーマンの男は自分の顔から金属片が飛び出ているのを発見する。その日から、彼の身体は金属片によって蝕まれていく。すべての発端は、数日前に車で轢いて山林に捨てた“やつ”の恨みにあり、彼による復讐であることに気付いた男は“やつ”と対峙するのだが……。

そもそも監督自身が楳図かずおの『わたしは信吾』が好きという話だったり、『AKIRA』に衝撃を受けたという発言を塚本晋也×大友克洋の対談で語っていたりするので、意図していなくても潜在的にオマージュになっている部分はたくさんあるんでしょう。類似性が指摘されている諸星大二郎の『生物都市』も監督の愛読書だそうです。

ちなみに男たち夫婦(同棲しているだけ?)が山の中で瀕死の男を転がして捨てた後、セックスするシーンは伊丹十三の『お葬式』を思い出しました(こちらは死体遺棄めいたことはしないけど)。「生と死」の対比という感じで、両作品共に「死」に触れた直後に獣めいた性の衝動に身を任せて青姦してしまう演出が似ていてハッとしたわけですが、これは一応『鉄男』の方が先ということで。エロスというか卑猥さは伊丹節の方が勝ってますけど。

和製『イレイザーヘッド』の趣も若干ありますが、デイヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』のサントラを手掛けたナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーが塚本監督のファンを公言しているとのことで、2010年制作の『鉄男 THE BULLET MAN』ではエンディングテーマを提供したのだそう。色々と影響・共鳴し合っている感じで楽しそうですな、インスパイアされてなんぼだよね。

最後に今回『鉄男』を観たくなったのは、吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ』にチョロっと出て来たからで、町山さんがその辺に関する面白い解説をしています。下記のリンクからどうぞ。


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鉄男 TETSUO(1989)
TETSUO THE IRON MAN
監督:塚本晋也
上映時間 67分
製作国 日本
初公開年月 1989/07/01
ジャンル ホラー

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