リドリー・スコット監督『プロメテウス』:続編が待ち遠しい

prometheus プロメテウス

「人類はどこから来たのか?」のサブタイトルが独り歩きしてしまったのか、史実に基づいた?考古学的ドキュメンタリーか何かを求めて観に行った客層もいるようで……(あのポスターをどう見たら、そう思えるのか不思議)。監督がリドリー・スコット、しかもH.R.ギーガー調のあの顔のデザインを見て「エイリアン」が連想できないとなれば、そりゃ「グロくて人生最悪の映画でした!」ってなっちゃうよね、たとえ起源が明かされてもフィクションだし(笑)。というわけで、予備知識が無い人々からはケチョンケチョンにけなされ、エイリアン・ファンたちからも脚本の矛盾を突っ込まれまくってズタズタ感のある本作なんだけど、力技ともいえる「映像美とスタイリッシュさ」ですべてを乗り切っていて、観終えた後も謎だらけの演出・設定に否が応にも思いを馳せてしまうという味わい深い作りになってます。キューブリックの宇宙船・エイリアンの陰湿な雰囲気・シャーリーズ・セロン人間離れした美しさ(ただし美脚は封印)あたりのキーワードに引っ掛かりを覚える人は絶対に観て損なし。しかもネット上にいろいろある解釈論を読んで楽しめるようにもなるし、なんだかんだ言っても良質な映画。


それで大味なのか意図的なのかわからないけれど本作における謎・矛盾に関しては、既に公開されて時間が経過していることもあってリスト化されているので、それを引用。

プロメテウス よくある質問と答え

Q.エイリアン1とつながらなくね?
A.エイリアン1とプロメテウスでは行っている星が違います。
エイリアンはLV-426、プロメテウスはLV-223。

Q.プロメテウスでスペースジョッキーの謎が分かるの?
A.一部分ったこともありますが、大部分は未解決です。
すでに続編の制作が決まっています。

Q.エイリアンは出てくるの?
A.出てくるけどストーリーには絡みません。

Q.アンドロイドのデヴィットはなんで毒を盛ったの?
A.デヴィットは他のメンバーより宇宙人に関する情報持っていたようですが詳しい説明がありません。
続編で判明するかもしれません。

Q.セロンは船長と寝たの?
A.状況から考えてセックスしたと思われます。セロンはあの後髪型が変わっています。

Q.セロンはアンドロイドなの?
A.今のところ人間と考えるのが妥当です。ただしリドリー・スコット作品ではブレードランナーの
デッカードのようにどう考えても人間だけどあとからロボットと言ったりするので油断できません。



ツッコミリスト

・未知の星へ未確認の宇宙人に延命を頼みに社長が直接行くのがおかしい
・友好的な宇宙人である前提で動いている
・未知の星で安易にヘルメット脱ぎすぎ
・手術マシンは帝王切開はできないけど、腹部の異物は取り出せる
・帝王切開直後にダッシュ
・宇宙船が倒れてくる方向に逃げるセロン
・もっとドームに寄せて宇宙船を着地させればいいんじゃね?
・船長がファック中にメンバーが大変なことに…
・セロンはアンドロイドっぽいけど、否定しているセリフもあるしどっち?
・巨大な顔はなんだったの?
・アンドロイドのデヴィッドが未知の宇宙船を操縦できるのなぜ?
・イカ短時間で大きくなりすぎだろ!
・アンドロイドだけで行けば犠牲者出ないんじゃね?
・白大男が寝起きハイテンションな件
・白いオッサン相手にアッー!とか誰得なんだよ…



『プロメテウス』と『エイリアン』における複雑な時系列に関しても、まとめられていたものを引用。(『エイリアン』に関しては初期スクリプトでは2087年、LD版では2032年と表記されているという話もあり)

映画『プロメテウス』『エイリアン』『プレデター』『AVP』時系列

エンジニアが地球にDNAを散布(プロメテウス) 太古の地球
プレデターが人類に干渉(エイリアンVSプレデター) 紀元前
プレデターが海賊と接触(プレデター2) 1718年
南極捕鯨基地の職員が全滅(エイリアンVSプレデター) 1904年
『プレデター』1987年
『プレデターズ』 推定1987~1997年の間
『プレデター2』1997年
『エイリアンVSプレデター』2004年
『エイリアンVSプレデター2』2004年
日系企業ユタニ社にプレデターの技術が渡る(エイリアンVSプレデター2)2004年
ピーター・ウェイランドによるTEDスピーチ(プロメテウス)2023年
『プロメテウス』2089年
ウェイランド社とユタニ社が合併 推定2089~2122年の間
『エイリアン』2122年
『エイリアン2』2179年
『エイリアン3』2270年
ウェイランドユタニ社が経営破たん 推定2400~2470年の間
『エイリアン4』2470年

映画『プロメテウス』『エイリアン』『プレデター』『エイリアンVSプレデター』のストーリー時系列まとめ



個人的な話だけど、今年の頭に開腹手術を受けた身としては、ショウ博士が全自動手術台にて自力で帝王切開してホッチキスで止めるシーンは、スリル感と杜撰な演出の両面でインパクトあり過ぎました。最近は開けたお腹を閉じるのに体内で溶ける糸を使って縫合、そのうえから透明なボンドで固めて一か月くらい放置という処置をとるので、「ホッチキスで止めるだけかよッ!」って度肝を抜かれました。しかも、その後に全力ダッシュなんてしたら出血多量でお陀仏なはずなんですよね(というか、そもそも走ることすら痛くて出来ないわけですが)。負傷したレベルにもよるけど、大きな傷を負った直後に大活躍されると若干萎えるという……。せっかくSFなんだから、お腹を縫って痛みまで克服できるシーンは近未来的テクノロジーの発想をもう少し練って説得力を持たせて欲しかったです。でも、あの狭いカプセル状の手術台でイカと一緒に閉じ込められてしまう場面は、なかなか緊張感の高い仕上がり。

毎度、地球にエイリアンのサンプルを持ち帰りたがるという意味で諸悪の根源的な「ウェイランド社」、そのトップであるピーター・ウェイランド(ガイ・ピアース)が若かりし頃にTED/2023で行ったスピーチという手のこった映像まで作ってあるんだけれど、これはプロメテウス本編には未収録。実は壮大に作り込まれているんだけど、あえて中抜きにして謎の余韻を残しつつ次回作へつなげようと考えている可能性はありますよね。でも、スペース・ジョッキーやエンジニアたちの宇宙船が墜落したりするシーンで『エイリアン』と完全につながると思いきや似て非なるニアミスで終わらせてしまったあたり、すでに本流の『エイリアン』枠に収めることは放棄している、というか途中で「こりゃムリだ」って監督も諦めてしまった感じがしないでもないです。だから、プロモーションでも『エイリアン』のシリーズであることは大々的に言っていないのかも、「エイリアン……かな?」みたいな自信のなさがあるみたいなw。どちらにせよ面白いことに変わりはないし、続編が作られることも決定しているようなので、絶対に次も観に行くつもりです。

Prometheus Movie Clip presents Peter Weyland Character



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プロメテウス(2012)
PROMETHEUS
監督: リドリー・スコット
上映時間 124分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開(FOX)
初公開年月 2012/08/24
ジャンル SF/アクション/サスペンス
映倫 PG12

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