頑張りは評価したい『ゾンビ・クロニクル』

ゾンビ・クロニクル

 マイケル・バートレット監督による『エスケイプ・フロム・リビングデッド』の続編。巷のレビューでは「つまらん」扱いが目立ちますが、制作陣の頑張りと意気込みが伝わってくる点は評価したくなります。脚本とかの出来は置いておいて、なんかすごい生真面目な作りで闘ってます。ロメロ精神を引き継いだ走らないゾンビの存在がむしろ斬新であった、というよりもゾンビは「絶望的」という世界観の演出的要素の方が強めで、見どころは生き残った人間同士の殺し合い。


ゾンビ・クロニクル(2011):マイケル・バーレット監督
WORLD OF THE DEAD: THE ZOMBIE DIARIES
ZOMBIE DIARIES 2

世界が謎のウィルスに感染して4ヶ月。イギリスでゾンビとの戦闘を続けていた生き残りの陸軍部隊だったが、ある夜にゾンビの大群に襲撃され基地は壊滅した。何とか脱出し、安全と言われるオランダを目指して東海岸に向かうが…。


 全編を通して主観ショットのPOV+赤外線撮影で、この映像が「暗い」「揺れる」「汚い」といったありがちな低評価を招いている様子。しかも、生き残り軍隊の脱出ストーリーという筋書きもかなり平坦で肝心のゾンビとの戦闘も控え目。でも、ドキュメンタリー・タッチで淡々としている分、クールな印象でB級映画の中に何か言い知れぬスタイリッシュさが感じられるような気にも。(撮影者が軍人にも関わらず最後まで戦わないムリ設定で、彼のラストが『クローバーフィールド』的なのは笑いましたが)

 で、ウィルス蔓延の世界終末を控えているにも関わらず、テーマ性として比重が置かれているのは「生き残り少数陸軍部隊VS盗賊チンピラ」という人間同士の争い。ありがちではありますが、盗賊に捕まってしまってからのスナッフ具合が、なかなかの山場と言えると思います。

 最後のシーンはPOV映像から解放されて、神の視点に切り替わりますが、まったく希望が無いことを示す終わり方がディストピアなテイストで良いです。この辺はゾンビ映画をはみ出してSF的な雰囲気すらありました。もっと予算なり動員できる役者なり増やせれば、クオリティーの高い作品を作る実力はありそうです。



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