【衝撃事件の核心】いたずらでは済まない…「先生を流産させる会」の中学生が実行した「おぞましきアイデア」

【衝撃事件の核心】いたずらでは済まない…「先生を流産させる会」の中学生が実行した「おぞましきアイデア」
魚拓(以下全文)



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「先生を困らせてやろう」。そんな些細(ささい)ないたずら心から、愛知県半田市立中学に通う1年生の男子生徒11人が、数カ月後に出産を控えた30代の担任女性教諭を標的に結成したグループは「先生を流産させる会」という名前だった。えげつないネーミングと、教諭の給食に異物を混ぜるといった陰湿な手口は一躍、全国ニュースとして報じられた。市教委は「あくまで稚拙ないたずら」との立場だが、ネット上では無関係な生徒の名前が“犯人”としてさらされるなど別の被害も出ており、「悪乗り」の代償は大きい。

《抹殺すべし》…ネットは“祭り”に


《殺人未遂です 告訴すべき》

《イタズラじゃ済まないレベルだよな》

《流産させる会って……人間としてありえん 発想がゾっとする》

「先生を流産させる会」の問題が報じられた3月28日以降、インターネット上の掲示板には、生徒らの行為を厳しく指弾する書き込みであふれかえった。

 それだけではない。

《一味の名前を公表しろ》

《実名はまだか こいつらの社会的生命も抹殺すべし》

そんな書き込みも相次ぎ、ついには〈愛知県半田市立△△中学校 先生を流産させる会2009 容疑者一覧〉と題して、会とは関係のない生徒の名前がネット上でさらされる騒ぎにまでなった。

半田市教育委員会はこうした掲示板の管理者に、書き込みを削除するよう依頼。また、“容疑者一覧”の参考にされたとみられる市内の中学校のHPもトップページ以外は閲覧できなくなっており、〈新年度に向けての更新中につき一時的に閉鎖しております〉というおことわりの一文が添えられていた。

ネット上で、“祭り”状態となった今回の問題。その発端は2月25日にさかのぼる。


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ある2年生の女子生徒が、校内を駆けめぐっていたうわさについて、自分の学年を受け持つ教諭にこう耳打ちした。

「○○先生の給食に、男子が実験で使った粉を入れたらしいよ」

驚いた学校側が男子生徒数人を呼び出して事情を聴いたところ、1年生の男子生徒らが1月に結成した「先生を流産させる会」の存在と、数々の悪事が明らかになったというのだ。

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ネジをゆるめ、ミートソースに異物


市教委や関係者によると、これまでに確認できた会のいたずらはこうだ。

1月下旬、生徒らが教室にあった担任用いすの背もたれ部分を固定していたネジを手でゆるめた。妊娠中の女性が転倒することがどんなに危険なことか、生徒たちは理解していなかった。

しかし、背もたれは多少グラついていたものの、何日たってもはずれる様子はなかった。他の教科を受け持つ教諭もこのいすを使用していたというが、結局、幸いにも転倒事故には至らなかった。

時期を同じくして、今度は所有物への嫌がらせも始まった。

マイカー通勤をしていた教諭は、いつも敷地内の屋外スペースに車を止めていたが、偶然にも担任するクラスの真下に位置していた。生徒らはそこに目をつけた。

両手のひらに固形のりを塗りつけ、こすって作り出した粘着質の物体にチョークの粉、歯磨き粉をまぜて作り出した“特製物質”。それを教室の窓から教諭の車めがけて振りかけた。

生徒たちは「2回やった」と話しており、教諭も当時から異常に気づいていたようだが、まさか自分を標的にした会を結成しているとまでは思わなかったという。

そして、2月4日。生徒たちの悪乗りはエスカレートし、ついに給食への“異物混入騒ぎ”が起きる。


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この日午前、生徒らは理科の授業でミョウバンと食塩を使い、結晶作りの実験を行っていた。

「先生の給食に入れてみよう」

ちょうど給食当番だった会のメンバーがこんな提案をした。他のメンバーも加わってミョウバンと食塩をつまみ出してティッシュペーパーに包み、こっそり持ち出した。

給食のメニューは蒸したサツマイモにソフト麺(めん)、パック牛乳など。ソフト麺はビニール包装された麺を、おわんに入ったミートソースにつけて食べるというものだ。

女性教諭はこの日、不登校の生徒に付き添い、別室で給食をとることになっていた。そのため、給食を運んでくるよう当番に指示していたが、生徒4人が周囲の目を忍びながら、ティッシュに包んだものをひとつまみ、ミートソースの上にかけた。

見張り役まで用意した周到な行動だったが、同じクラスの女子生徒が混入する瞬間を目撃。ここからうわさが広がり、学校側も知るところとなった。

ミョウバンは食品添加物や殺菌、消臭に使われるもの。発覚後に病院で検診を受けたところ、幸い教諭の体調に異常はなかったという。

きっかけは席替え? 市教委は「いたずら」の見解崩さず


なぜ、生徒らは教諭への嫌がらせを始めたのか。市教委によると、きっかけは昨年12月と今年1月に行われた席替えだったという。

教諭は席替えに際して、不登校の生徒の近くに比較的仲の良い生徒を配置するなどの「教育的配慮」を行ったところ、一部男子生徒が「先生が(席の並びを)操作しとる」と反発。また、このころ生徒の1人が部活動での態度をめぐって教諭から注意を受け、不満を募らせたらしい。


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「先生を困らせてやろう」
 
そうして、かねてから教諭に反発していた数人の生徒が、他のクラスメートにも声をかけて「流産させる会」を結成した。

ただ、会といっても11人のメンバー全員がまとまって行動していたわけではなく、一部の生徒は誘われるがままに入会を承諾。「会の名前すら知らない生徒もいた」(市教委)という。

会に参加したのは、どんな生徒だったのか。
 
市教委によれば、「ごく普通の生徒という感じ。授業中に席を離れたり、妨害するといったトラブルは報告されていない」。一方、被害にあった教諭についても、「ある程度のキャリアも積んでおり、保護者や生徒とのトラブルは聞いていない。他の生徒とは良好な関係を結んでいたようだが…」と困惑気味に話す。
 
事実を把握した学校は生徒と保護者を呼び出して注意し、生徒らは教諭に謝罪した。
 
それが一連の顛末(てんまつ)だが、今回の問題について市教委は「会のネーミングは非常に由々しきもので許されることではない」としながらも、「状況を見ると、殺意があるとか、本当に流産を狙ったものではなく、あくまで稚拙ないたずら」との見解を崩していない。
 
関係者によると、ある生徒はミョウバンと食塩を自分の給食の蒸しイモにもかけ、実際にそれを食べていたという。そういった状況からも市教委は、「生徒らに殺意や計画性はなかった」と判断したようだ。
 
だが、世論との“温度差”も垣間見えるだけに批判も出始めている。
 
市教委に多数寄せられた電話やメールの中には、「流産という言葉を使ったのは許せない」「いたずらというレベルではない」「そんな指導でいいのか」といった厳しい意見も複数あったという。

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被害の教諭は「これを教訓に」

 
実際、これらの意見が指摘するように、過去には未成年のいたずら感覚の行為が重大な結果を招いたケースも少なくない。
 
愛知県豊田市では昨年7月、少年2人が投げ込んだ花火が原因で民家が全焼し、住人の男性が一酸化炭素中毒で死亡。放火容疑で逮捕された2人は「いたずらのつもりだった。火や音で驚かせてやろうと思った」と供述したという。
 
早稲田大学教育・総合科学学術院の河村茂雄教授(カウンセリング心理学)は、今回の騒動について「仮に遊び半分で流産という言葉を使ったのだとしても、子供たちはそれが社会的にどんな影響を与えるかが分かっていない」と指摘。「学級が崩れ始めると、初めは小さないたずらであってもそれが他の子供に波及し、エスカレートしていく可能性もある」と警告する。
 
また、埼玉学園大学人間学部の古沢照幸教授(社会心理学)も「受験や通塾のストレスがこうしたいたずらの背景の一つとなっている」とした上で、「いたずらといわれるものは、処罰されることがないので必ずエスカレートしていく。校長など組織のトップが、いじめやいたずらが人に与える痛みを知らしめないといけない」と、学校側の対応の重要性を説く。
 
被害を受けた女性教諭は一連の嫌がらせや会の存在を知った上で、11人に対して「これを教訓にして、いい形で成長してほしい」と話しており、警察に届ける予定はないという。現在は産休に入り、5~6月ごろとみられる出産を控え、静かな日々を送っているようだ。
 
しかし、ネット上の喧噪(けんそう)はしばらくやみそうになく、悪乗りの代償としてはあまりにも大きいツメ痕を残した。


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