村上春樹『騎士団長殺し』:井戸とか穴がチート装置化してる問題

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村上春樹の新作長編『騎士団長殺し』 感想・批評

村上春樹の新作長編『騎士団長殺し』を読んだので、その雑感のようなものでも。過去作品の焼き直しとか、あまり芳しくない評価っぽいけど、たしかに「村上春樹」の作品でなかったなら読み切るのが辛かった部分もあって、ブランド力って偉大だなあと(笑)。

でも「過去作品の焼き直し、テーマの使い回し」と批判されたとしても、それでも売上があるんだからベテラン作家の特権と言えるし、むしろ大御所になっても新しい作品を創作し続ける気概は無くしていないという意味で評価されるべき部分だと思えたりもします。

大江健三郎なんかは後期の作品になると自身の出身地である四国の森の話ばかり延々と書いていたりするし自己作品の引用も多くて、一見さんお断りな作風になってしまったためか「読者がお前の全作品を読んでいると思うなよ」なんて批判されてますが。それでもある程度の売上はあるから許されるということなんでしょう。(大御所過ぎて編集者が何も言えない可能性もありそうだけど……、御年82歳『晩年様式集 イン・レイト・スタイル』が最後の作品になってしまうのか)

『騎士団長殺し』に戻ると、あらすじは妻から唐突に離婚を切り出された主人公の画家、その彼に起こった1年弱の物語という構成。部分的に2014年に出版された短編集『女のいない男たち』にあるプロットをつなげて拡張していったような作りで、この離婚やら不倫のテーマ性へのこだわりのせいで「もしかして春樹って離婚したのかな?」と思わず穿った読み方になってしまったけど、私小説ではないので作品と作家の私生活は別モノとしないといけないですね(ちなみに調べた範囲では村上春樹が離婚したことを報じた内容は見つからなかったです)

で、読んでいて辛いというか、なんかチートに感じたのはイデアの力を借りて女の子がピンチを切り抜けるシーンで、ネタバレになるから具体的に書かないけど、マジックリアリズムとかスリップストリームと言われる手法を都合よく使っているなあと。ミステリーだったら許されざる行為で(まあ、ミステリーではないんだけど)、それにしてもご都合主義的なものを感じずにはいられないモヤッとした読後感が残りました。

思うに春樹の小説に井戸とか穴が出てくると、まさしく表象的な意味で精神的に深い部分にいることを現していて、そこにおいてはどんな超常的な現象も起こりうるし、それが小説内の現実世界にまで作用しつつ許容されてしまうから、要するに「井戸・穴」の類がご都合装置化しているんじゃないかと。その辺が春樹の上手さでもあるしズルさでもあるのかなぁ、なんて気がしました。

まあ、別れた妻の妊娠した経緯は、そういったなんでもありな世界観故に面白い含みを持たせてますけどね。

それでは今日はこの辺で。



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