『クロユリ団地』:団地の持つ怖さという観点から

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クロユリ団地 中田秀夫監督 前田敦子 成宮

タイトルが発表された時には、全国の団地ファンに激震が走った(と思われる)中田秀夫監督による新作ホラー『クロユリ団地』。オレたちの愛してやまない団地でいったい何が起こってしまうのか!?という期待と不安がありましたが、蓋を開けてみると肝心要の団地成分が足りなくない?といった印象でした。舞台設定そのものであるのに物足りなく感じるという不可思議な現象。しかし、その理由を突き詰めてみると団地の構造自体に問題があるような気がしてきます。

ストーリー
家族と共にクロユリ団地に越してきた二宮明日香(前田敦子)は、隣人の部屋から聞こえてくる奇妙な物音に悩まされていた。ある日、団地近くの公園で出会った少年ミノル、彼の祖父が住む部屋というのが問題の音が聞こえてくる部屋だった。隣人を訪ねる決意をした明日香がそこで見たものとは……、そして、その後を境に明日香のもとへ頻繁にやってくるようになるミノルの正体とは……。

団地好きな人間の中にも色々と細分化された嗜好性はあると思いますけど、あの画一的で人工的な建造物が老朽化を迎えた末に醸し出してくる貧相なんだけど妙に禍々しい外観の雰囲気、そこに魅力を見出す層っていうのは確実に一定数……、いや、むしろけっこうな多勢を占めるのではないかと勝手に想像しています(団地暮らしの人には悪いけど、常に餓死とか殺人とか衝撃的なことがナチュラルにどこかの部屋で起きてそうに見える)。

そんなわけで、あっちゃんが対面にあるお隣さんの部屋と自室を行ったり来たりの大騒ぎをするだけでは、団地モノの見せ方としてはちょっと物足りないのではないかと感じました。彼女の行動範囲が限定的過ぎて団地の表情が伝わってこないわけです(公園は良かったけど)。やっぱり「ホラーの中の団地」を期待させるタイトルであるのだから、監督が怖いと感じる団地ディティールやカットをもっと挟み込んで「団地観・団地象」を披露して欲しかったな、というのが感想です。

監督の代表作のひとつである『仄暗い水の底から』の舞台だった「マンション」の雰囲気があまりにホラーとして出色の出来だったから、自然と「団地」にも期待が高まっていた、というか高まり過ぎていたというのはあるかもしれません。でも、そもそも今回の都営団地みたいなタイプの建築構造だと、マンションのエントランスホールや管理人室、それに長い廊下とかエレベーターがあるわけでもないから、「これ以上、何を映せっていうんだ?」って話であることも理解できます。他の棟の間を頻繁に行き来するみたいな話だったら、団地全体が俯瞰できる映像になって空間の持つ異質性がもっと際立ったかもしれませんけどね。

とにかく色々考えて思ったのは、古い団地群って総体としては不安を掻き立てられる存在であるけど、棟単体の持つ構造というか構成要素はシンプルだから(特に作中に出て来たタイプの団地)、詳細に恐怖感を煽った描き方をしようとするとディティール不足になってしまって実はけっこう難しいのではないか……ってことでした。そんなわけで全編通してほぼ団地が映っているのに、期待した気味の悪い団地としては物足りなく感じてしまう、そんな結論です。

ちなみに前田敦子の演技はかなり良くて、脚本も奥行があり奮闘してます。でもクライマックスあたりの演出はどうしたんでしょうかね、なんか妙にサイケデリックな照明でちゃちなお化け屋敷みたいな感じ。あと祈祷師のおばさんたちが集まって念じるシーンは、「虫コナーズテクノ」に通じる何かを感知いたしました。念仏を唱える声がなんかバラバラでやっつけじゃない?みたいな(笑)。怖さという意味では山場よりも前半が勝ってたかな。あと最後にネタバレ的なことでもあるんだけど、団地に単身者が引っ越すのって可能なのか?っていう疑問が残りました。(ということで調べてみたけど、入居条件がやっぱり厳しそうだった)

クロユリ団地(2013)
監督: 中田秀夫
上映時間 106分
製作国 日本
公開情報 劇場公開(松竹)
初公開年月 2013/05/18
ジャンル ホラー
映倫 G
誰から、死ぬ?

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