ニコラス・ウィンディング・レフン『ドライブ』:逆間男はヒーローの夢を見るか?

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drive ドライヴ ニコラス・ウィンディング・レフン

LAのクール&ダークな夜の街並みにキッチュで切ない80’Sシンセ・サウンドのスコアが絶妙にマッチして、なかなか強度のある世界観を持った作品に仕上がっている。映像美と行間を読ませる摩訶不思議な演出の雰囲気はデビッド・リンチで、バイオレンス描写とフィルム・ノワールのテイストはタランティーノかな、という印象。カンヌ国際映画祭監督賞を受賞して2011年度最大に「変な映画」と町山智浩さんに言わしめたこともあって、観る前から随分とハードルが上がっていたけど杞憂に終わったというか、まあ面白いのは確か。でも個人的に感じた「変な映画」具合で言うと、ライアン・ゴスリングの演じる「逃がし屋」ドライバーの恋愛感情のあり方がダントツでおかしいだろうという話。

drive ドライヴ
あらすじはジョージ・スティーヴンス監督の『シェーン』と同じということなんだけど、まず犯行現場から犯人たちの逃走用車両の代走のみを請け負う「逃がし屋」ドライバーが、隣人である子持ちの人妻(キャリー・マリガン)に恋をすることから始まる。その後しばらくして刑務所に入っていた彼女の夫が出所してくるため(アパートの廊下にて、ドライバーに「俺が刑務所にいる間、うちのカミさんが世話になったんだって?なあ?」と凄む夫のシーンは嫌な緊張感あったな笑)、これでドライバーの束の間の恋愛劇にもあっさりと終止符が打たれてしまうのかと思いきや、夫は刑務所で作っていた借金を巡ってその筋の人間に出所後間もなくボコボコにされることになってしまう。しかも、それを彼の子供が目の当りにしていている現場にちょうど出くわしてしまったドライバー。彼の心には何やら得体の知れない正義感が湧き上がってくることに。

惚れた女とその子供のために鬼となったドライバーは、夫の借金に片を付けるため「質屋に隠してあるマフィアの闘争用資金」をかすめ取る大きなヤマの「逃がし屋」ドライバーに自ら志願する。質屋へ押し入って強盗する夫をドライバーが逃がしてやるという計画だったが、そこにはとんでもないトラップが隠れされていて……、というのがプロットの大枠。

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映画のメインテーマのタイトルが”A Real Hero”ということでもあるので、女のためにその家族もろとも愛して、彼女が幸せになってくれるならその夫の助けにもなる、そんな慈愛に満ちた彼の姿こそ「本物のヒーロー」と大文字で提示されている感じである、でも正気の沙汰では無い。孤独に暮らすドライバーが家庭の団欒とした姿そのものに恋するという側面もあると思うし、愛する人のために危ない橋を渡った末に足元をすくわれるプロという意味では『レオン』のようでもあって、この『ドライバー』が脚本的に破綻しているわけはないけど、でも「これがヒーロー?」という感じがしないでもない。いや、「ヒーロー」であるかどうかなんてことより、そもそもドライバーの恋愛に対する空転力が凄まじくて、そのせいでメイン・キャストがほとんどお亡くなりになってしまうというね(笑)。その計り知れない恋心に「?」がついてしまうのは、恋愛の当事者でないからなのか。とにかく「お前と俺と女以外にもういないんだから、直接会って話し合おう」なんてセリフが作中にも出てくらい皆殺しバイオレンス。ただのサイコパス野郎にならないように、ちゃんと復讐劇として成立するように伏線も貼ってはあるし、実際にこの映画は復讐劇なのである。

しかし、映像的な美しさとか行間で恋心を物語るスタイリッシュな作りだから、なんとなく「変な映画」もとい「変な主人公の恋愛観」具合がうまく覆い隠されているけれど、恋心でもって相手の夫まで助けるという逆間男、逆NTRのような現象って、歪であるし絶対的に異常である。どうやって自分の恋愛感情と折り合いをつけているのか、何か押し殺しているものはないのか?そんなことを思うと、どこかに狂気が潜んでいるように思えなくもないし、恋愛に費やせなかった有り余るエネルギーが復讐に全力で注ぎこまれた結果のあのバイオレンスなんじゃないの?という話で、夫が殺されていなくてもいずれ自分でヤルだろう、という怖さがある。作品自体はとにかく面白いんだけど、それとは別に逆間男という存在の奉仕精神がショッキングで解せないものだった。『シェーン』も基本のプロットは同じなんでしょ?そういうの好きな人が多いのか。それと「ヒーロー像」に話を戻すと、『ダークナイト』みたいに徹底的に報われないもののために奉仕する姿こそが真のヒーローという考え方が最近の分かりやすい流行ではあるよね、持て囃されているだけのヒーローなんて確かにウザいだけではあるけど(笑)。

あと町山さんが、キャリー・マリガンはAV女優の小坂めぐるに激似と言っていた。



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ドライヴ(2011)
DRIVE
監督: ニコラス・ウィンディング・レフン
上映時間 100分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開(クロックワークス)
初公開年月 2012/03/31
ジャンル サスペンス/犯罪/アクション
映倫 R15+
疾走する純愛――

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