アンドレ・ウーヴレダル監督『トロール・ハンター』:おバカ映画じゃなかった

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トロール・ハンター

ノルウェーの森に潜むトロールをハントする謎の男を追う疑似ドキュメンタリー映画。「低予算で一発当てるならPOV一択」みたいな標語が業界内にはあるのかもって思えるぐらい、この手の主観ショットな作品がここのところ急増しているので食傷気味な感はありますが、そんな競合ひしめく激戦区にあってもこの映画が頭ひとつ抜けた仕上がりなのは、「トロール・ハンター」の作り込まれた設定自体が興味深いので見飽きないということが大きいのだと思います。日本版トレーラーが結構おバカな作りだったので、オチャラケ・トロール頼みのモンスターパニックアクションなのかと思いきや、山場以外でもしっかりとした脚本で戦っているかなり真面目で硬派な作品でした。

ストーリー
熊の密猟事件を調査する3人の学生。彼らは怪しい男、ハンスが密猟を行っているハンターと推測し、尾行するが、深夜森の中で何者かに襲撃され、ハンスに助けられる。ハンスによると、襲ってきたのはトロールで、自分はトロールの存在を隠蔽するためにトロールを狩っているトロール・ハンターだという。国に雇われてトロールを狩っているハンスだったが、トロールの扱い方に疑問を持っており、トロールの実在を公表するために学生たちに取材を許可する。半信半疑ながらもハンスについていく学生たちだったが、やがて彼らの前に、本物のトロールが姿を現した。


序盤は謎の男・ハンスをひたすら追うことに費やされてますが、学生たちがトロール狩りへの同伴を許されたあたりからは、その仕事にまつわるディティールが豊富になってきて俄然面白くなります。トロールに嗅ぎつけられないように、トロールの肉を煮越して作った悪臭漂う硬化油を体に塗りたくったり、トロールを退治した後は報告書をTST(トロール保安機関)に提出しなくてはいけないといってその書面を映したり、紫外線を照射すると爆発or石化して死ぬトロールの身体的メカニズムを説明してみたりと、本当の熊狩りに際する手続きの手順や実在する生物の生態的特徴を模倣したような緻密さで安っぽさが皆無。ハンターのハンスが獣医師と頻繁に携帯で連絡を取り合う様子も臨場感があります。というのもトロールたちはある「理由」によって異常事態に陥っていて、本来身を潜めているはずのテリトリーを離れて暴れ回っていることが分かるからです。(「理由」っていうのは、これまたPOV映画の『REC』と似たものだったりするけど)


それと作中にも「マイケル・ムーアなら……」みたいな台詞が出てくるように、トロールという政府によって秘匿された存在の真実を暴く設定を強く押し出していて、なんとしてでもトロールを隠し通そうとする役人に楯突くシーンなど、政府や既得権益者を糾弾するドキュメンタリー作品を模した迫力もあります。そしてトロールの扱い方や残酷な処分の仕方に疑問を感じると共に苦悩するハンスと獣医師の姿というのは、本物の動物愛護団体・環境保護団体が直面している問題のようなやるせなさが滲む描写で、疑似ドキュメンタリー=モキュメンタリーであるにも関わらず、現実とリンクした訴えを喚起させられます。やはりトロールに相当する実在する動物とその周辺団体などの話を下敷きにして脚本を練ったのだろうなと感じました。(『ザ・コーヴ』あたりは絶対に参考にしているんじゃなかな、僕は怖くて観てないけど)


当初は、はしゃいでいるだけだったオチャラケ学生たちが最終的に大真面目になってトロールを追うことになるわけですが、そんな彼らを夢中にさせたトロールの造形っていうのも禍々しさばかりを強調したいかにもモンスター然とした造りではなく、「かいじゅうたちのいるところ」のようなモフモフとしたやつもいたりで、殺戮娯楽映画の路線で撮る気は毛頭ないといった制作陣の表明のように思えました。それと、後半でメンバーチェンジがありBBSの動物番組用にライオンなどの撮影をしているというプロ・カメラマンが加入したことで、素人POV撮影からプロによる撮影へ移行するという演出もあって、映像が一気に安定的かつ美しくなります。ブレの少ない映像へと移行する動機に脚本的な破綻がなくて、この辺の工夫は巧みだなと。

トロール・ハンタートロール・ハンタートロール・ハンタートロール・ハンター

トロール・ハンター(2010)
TROLLJEGEREN
TROLLHUNTER
監督: アンドレ・ウーヴレダル
上映時間 103分
製作国 ノルウェー
公開情報 劇場公開(ツイン)
初公開年月 2012/03/24


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